【緑】こころ域 
るるりら

 「こころいき」


奇跡の勾配を ころがる
空は水色、
水は空色。

鳥が鳴き
あたりという あたりに
しきりは 無い
緑の匂いがする
こけて膝小僧を すりむいた
血が出ている

血の ちいさな うるおいが 膝にある日
ふたつの足が同じように きれいではない日
ふたつの足が ともに きれいになることを祈った

ふと
見知らぬ南極を 
見知らぬ北極を 
想う。
ふたつの極を
想う。

神様の真似は つまづきやすい
すりむいた膝小僧で 呼吸する  


ゆっくりと 深呼吸


神様みたいな こころいきは
緑の匂いがする

  

 「外野」

草野球の少年たちが
野っ原で
みんな敵のバットを見ている
偶然 とおりかかっただけだけど
だれにもしられず 少年たちの後で
いっちょまえの 外野の守り手になってみる

のんきに座って クローバーを手にしてるのは
おもてむき 
本当の こころいきは 立派な外野選手
こころの中で叫ぶ
四葉ん を 確保せよ




 「汽水域」

いつもと同じだ。潮の匂いが、混じっている。
緑のトンネルを抜けると、眩む光の向こうに
街が現れた。
---すこし潮の匂いがする。---
潮の匂いがするということは
いつもの場所から そう遠い場所ではない。

女たちが しゃがんで
草を刈っては籠にいれている。
夕飯にするのだろう。

この街には 大人の男は いない
乙女が 電車の車掌を務め、 
その襟は 元安川の鷺のように 白く、
少年が 思映い心を隠している、
奥歯に力を入れ、電車につかまっている。
嗚呼 この橋は御幸橋。
御幸橋にさしかかる電車よ、
最新式電車を器用に操作する 美しい女性(ひと)よ、




面影が 裏返る電車
すべてのものが 影という影すら失った日よ、
車窓のひとつひとつが 光が闇へと空転する景色
閃光に湧き上がる砂

この街には 人間は いなくなった
ただれた皮膚が 死んだ街に ゆらゆら ゆれて
なにもかもが
焼けただれ
あたりは色という色を失った。


それでも
ある日 ちいさな草が生え、
草の間に木が 芽吹いた。
そのひとつ ひとつの木に、
人々は 奇跡の木と 名づけた。

それらの木々は、
緑の匂いがする。 
神様のような匂いがする。


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novelistの「詩人サークル 群青」の二度目の参加作品です。
 課題は【緑】 
http://book.geocities.jp/sosakukobo_gunjyo1/


自由詩 【緑】こころ域  Copyright るるりら 2013-05-23 13:22:26
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