パスティーユ

柱の、柱の、柱の、のびて、ゆ、き、
くだりざか
水?喋り声、
手、のほほろぐ、パンプ
ス?ヒール?
スニーク、セカンド、火は消え、
祈られる(誰に?)煙と響き。


ころろきて……

街灯を少し下のらへん
定刻の秘密基地
一人称はわたしにのみ限られる
二人称はあなたにのみ
ファンデを溶かして
ルージュを流して
熾は集る

数を数える役目の子が消えてしまったので
わたしたちは自動ドアを開かせる
時間割を考えている間に地獄に落ちるドル札
レジ打ちの目をさえぎってそっとしのばせた封筒に
切ったばかりのトマト

わたしたちは自動ドアを開かせる
花屋に並んだ血と肉
ブッチャーの笑いとテレビの泣き声
牛脂の付いた薔薇

わたしたちは自動ドアを開かせる
横長の切符を使い横長の階段を下り横長の駅舎へ着き
横長の電車に乗り横長の書物を読み横長の駅舎へ着く

死んだ電車はユニットバスをこじあける十円玉を
握り続ける指のひとつ

そのうちに山手線は渦を巻いていった
煮え立つ湯と日輪
わたしたちは太陽の切れ端をなめた
しょっぱい味がしてあとは
溶けたチーズのような封蝋が死んだ


自由詩 パスティーユ Copyright  2013-05-21 22:46:23
notebook Home 戻る