禿頭
……とある蛙
沼のほとりで
朝日を何回か浴びているうちに
僕は気づいた。物語に参加していることに。
それから僕は
少し考えながら山道を登るようになる。
目の前にある栗林は
妙な匂いのする林で
樹木の間隔は…でばらばら
ガサゴソ小動物の動き回る音がし、
それを狙う猛禽類が頭上を舞う。
猛禽類は長元坊
小さな猛禽類
頭上からの威圧感を感じて
僕は闇雲に走る
山道はくねくねしているが
何も変化無く続いている。
行き先は頂上かも知れないが、
折から漂う霧のため
見通しは良くない
無意味な登坂
しばらく走ってゆくうちに
ふと気づく
これは僕のための物語とは違うではないか
と
この物語の主人公ではない
そのことに気づいた僕は
山道を足早に引き返し、
麓まで辿り着こうとした
せかせかとして汗ッ掻きの僕は
すぐにかの猛禽類に狙われ
頭の天辺を突かれ始めた。
頭に手をやると
大して苦労した覚えがないが
天辺から禿頭になっていた
初夏の太陽が
新緑の葉を透かして
降り注ぐ。
知らない間に老け込んだ僕は
足早に山を下りようとしている。
物語の主人公だと勘違いしたことを後悔しながら
足早に辿り着こうとしている
その昔、朝日を眺めた高さの処まで。
夕陽を浴びながら
ふと自分の姿を沼の水たまりで見ると
それは禿頭のフクロ鼠だった。