カバー
そらの珊瑚

次の冬のために
てぶくろを洗う
寒くなると
きまって血流障害を起こす
私のやわな指先を守るための
カバーたち

毛糸で編まれたもの
外国のお土産でもらった
ムートン製のグローブみたいなもの
(これは干すだけ)
フリース製あり
ヒートテック製あり
なぜか片方しかないのもあり
役たたず、と呼んでしまえばいいのに
やはり今年も捨てられない

子供の時
お気に入りだったピンクのミトンは
もう写真のなかでしか存在しないけれど

家の中でも
手袋をするため
いつのまにか
増えてしまった

たくさんのてぶくろが
五月のベランダで干され
ゆらゆらと
風がふくたび
私に手をふる
次の冬までのお別れだと
見えない水を手離しながら
身軽になってゆく

雲が出てきた
むきだしだった空を
守るようにして広がる
──明日の蒼のために
ひとときの
あんなに大きな
白いカバー







自由詩 カバー Copyright そらの珊瑚 2013-05-18 17:04:21
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