涙は手頃な宝石です
　貴方のほっぺを飾ります
　私の心を溶かします
　嘘でもいいかと許せます

　嗚咽が喉を焼きだしたら
　抑え込むのは無理でしょう
　風に押される野火のように
　貴方の声を燃やすのです

　悲しみは好きですか

　涙が言葉を飾るとき
　人はそこに美を見ます
　痛みと引き換えの崇高さ
　そういう取引が　好きですか

　望まない悲しみから
　得るものはありますか
　観客のいない悲喜劇の
　主役を演じられますか

　喜びに
　後ろめたさはありますか
　だから悲しみの傘を差し
　そこに微笑みを隠すのですか

　泣いている
　貴方の姿は美しい
　だけど私の胸を突くのは
　粉々に砕かれた
　心の破片の方なんです

　私はそれを拾い上げ
　破片の角で
　手首を切り裂き
　流れ出す血の味に

　自分の生を
　確かめるのです