水と水
木立 悟






割れた橋から
差し出される手
何も映さない
水たまり


指の上
冬の川
霧のゆく先
池を伝う陽


外灯の裏の夜を歩き
晒されつづけるはらわたと骨
水路と水路のはざまの暗がり
はかりごとのように揺れ動く


蒼から蒼へ 吸い込まれる影
火花の森に昇る月から
小さな行方を手わたされる鳥
海を見つめて動かない


耳から光を追い出してなお
弦はどこまでもどこまでもまばゆい
息を吹き込めば吹き込むほど
冬は春のなかに増してゆく


花を運ぶ径は途切れ
風は茎から茎へと巡る
路地を塗る路地
音を音に足してゆく


午後を呑むものを午後に捧げ
腕は空へ空へのばされる
橋をくぐり 橋を持ち去る
昏いうなじの測量士たち


破けた銀河に粉をそそぎ
命がわだかまる場所を見ている
見ることの向こうを
見つづけている


指先にたどりつく一滴と
一瞬の花にひらかれる羽
水は呼ばず 水は示さず
ただ己を己に描いてゆく




























自由詩 水と水 Copyright 木立 悟 2013-05-08 01:13:28
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