水と応え
木立 悟
布の鳥が鳴き
ほどけては地に落ちる
六角柱の空が
球になろうとして震える
砂煙の夜を
すぎる猫の背
二色をわたる
赤子の息
花のように立つ銀河
白は白く
名も無く生まれ
夜を分ける
窪みの底を
梳く羽の群れ
木の枠に収められた
水晶の車輪
雨の冠が
二つの夜の境に並ぶ
ある日うたを失くした場所を
水は静かに巡りはじめる
かたちを変えて在りつづけ
遠のくことのない冬と海
曇を運ぶ波のほうへ
つづく足跡
灯も星もなく夜は明るく
手に手に鉱もて集まる人の
背は闇に闇に闇に濡れ
失くしたうたを口ずさむ