左右リンチON
竜門勇気


カテゴリーに加えられて
気持ちいい僕と
喋る影の猿たちに
マシンガンが夜を裂いて
語りかける
朝が来るまで
朝が狂うまで

狂った時計が
緑色に光る
前時代に作られた
優しい光は
体にわるいらしい
ロザリオにしまわれている
窮屈ではないらしい
時間に紛れて消えている

年をとった男は
歌っていた
感動じゃない何かが
それを聞く
僕の背中に降っていた

雨みたいだった
なんの意味もないことだってことだって思った
そういうことが誰にだって起こったってわかった
あれから過ぎた時間は
そういうことだって起こせるくらいは長く
それ以上のことが起きるには短かったって
濡れながら分かった

嫌なことだらけで
鈍くなってきたつもりで
鈍いなんてのは強ささって
開き直りの最中に
全部帰ってきた

カラスと交わしてる
支離滅裂な英会話の授業
お互い叫びあって
くたびれた好奇心を殺しあう
アー!アー!

カラスにぶつける
不条理でさみしい問が
思ったより深く
二匹を結び付けてる
アー!アー!

どうしてこんな苦しい気持ちになるんだろうね!
アー!アー!
どうしてさみしいのに一人で居たいんだろうね!
アー!アー!

電信柱を見上げてる
電信柱が僕を眺めてる
何を考えていたのか
何者であったのかも
鞄にしまっていたので
僕はもうカラスになってしまう
昔に本で読んだカラスの鳴き方を頼りに
外敵が来た時の声を真似る

僕が僕であろうが
カラスであろうが
アー!アー!
誰も近寄んじゃねーぞクズ野郎
誰とも居たくねえ気分なんだ
人間だからでも
僕が僕だからでも
どうでもいいんだ

さみしいけど一人にしてくれ
悲しいけど慰めないでくれ
君が好きだけど応えないでくれ
もうつかれた
一人で大丈夫

カラスの言葉を覚えていてよかった
こんなに大きな声で
世界に響いている
猿もロックンローラーも
同じぐらいには美しく見える
廃墟の中にじっと座ってても
今がいつなのかわかるみたい

夜が明けるような世界では暮らせない


自由詩 左右リンチON Copyright 竜門勇気 2013-04-28 02:47:16
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