アシカセ
nonya


相変わらず僕は
たいていの場所へ
行けてしまう

羽ばたかない翼にしがみついて
南の島に不時着することだって
くねらない蛇に飲み込まれたまま
海峡の下に潜り込むことだって

軽過ぎるアシカセは
薄ら笑いのような音をたてて
何処までもついてくる

媚がこびりついた仕草で
毒の水を注いでもらっている時にだって
格安ドラマの主人公を気取って
一行の台詞をこねくり回している時にだって

自由と呼んでしまえば
どこまでも自由になりそうな
甘ったるいアシカセに頬ずりしながら
僕はうっとりと囚人の悲哀を語る

その気になれば
アシカセを改造して
翼のレプリカだって作れそうな
気がする

その気になれば
アシカセでリズムをとって
とびっきりの流行歌だって歌えそうな
気がするけれど

どうして目の前の
液晶ディスプレイの小窓に広がる
いとおしい痛みの色をたたえた
君の言葉の空を飛べないのだろう




自由詩 アシカセ Copyright nonya 2013-04-24 18:56:52
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