忘れてしまった
ウデラコウ

言葉の紡ぎ方をしばし忘れておりました
あまりにも喪失が大きくて

なくした なくした なくした と
途方にくれておりました

私には あれが全てなのだと
泣いて わめいたけれど

誰も見向きなどせず
日は昇り 繰り返すだけでした

夜は明けても
私から 暗闇が抜けることはなく

いとおしいという思いが全て枯れて
何もかもが
消えたところに

唯一あったのが

言葉でした

その頃にはもう 私は
色々なことを忘れて
残されたそれを どう扱えばいいのか
まったくわからなかったのですけれど

いくら見向きをしなくても
それがいなくならないものですから

仕方なく相手をしておりますと

それは 私に色々なことを思い出させてくれました

なくした なくした なくした と
泣いてわめいていたものたちは
結局のところ 私が 一つ一つ丁寧に捨てていったに過ぎず

拾いに行けば 捨てた頃のまま残っているわけで

なので随分と長く 色々なものを探しに出ておりました

見つからなかったものも正直あるのですけれども
今の私には もう 必要のないものですのできっと
違う誰かの ところへと いったのでしょう

遅くなりました
約束の時間は とうに過ぎたのでしょうけど

またここで

言の葉を紡いでまいりますので

空気の中に 春が住んで夏が舞い降り秋がふわりと落ちて冬が忍んできても

ここで

紡いでまいりますので

どうぞ 片手間に
お立ち寄りいただければ

幸いに おもいます





自由詩 忘れてしまった Copyright ウデラコウ 2013-04-23 10:22:47
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