忘れてしまった
ウデラコウ
言葉の紡ぎ方をしばし忘れておりました
あまりにも喪失が大きくて
なくした なくした なくした と
途方にくれておりました
私には あれが全てなのだと
泣いて わめいたけれど
誰も見向きなどせず
日は昇り 繰り返すだけでした
夜は明けても
私から 暗闇が抜けることはなく
いとおしいという思いが全て枯れて
何もかもが
消えたところに
唯一あったのが
言葉でした
その頃にはもう 私は
色々なことを忘れて
残されたそれを どう扱えばいいのか
まったくわからなかったのですけれど
いくら見向きをしなくても
それがいなくならないものですから
仕方なく相手をしておりますと
それは 私に色々なことを思い出させてくれました
なくした なくした なくした と
泣いてわめいていたものたちは
結局のところ 私が 一つ一つ丁寧に捨てていったに過ぎず
拾いに行けば 捨てた頃のまま残っているわけで
なので随分と長く 色々なものを探しに出ておりました
見つからなかったものも正直あるのですけれども
今の私には もう 必要のないものですのできっと
違う誰かの ところへと いったのでしょう
遅くなりました
約束の時間は とうに過ぎたのでしょうけど
またここで
言の葉を紡いでまいりますので
空気の中に 春が住んで夏が舞い降り秋がふわりと落ちて冬が忍んできても
ここで
紡いでまいりますので
どうぞ 片手間に
お立ち寄りいただければ
幸いに おもいます