黒い男
三田九郎

雨に濡れた路面が
世界を映し出す
あいまいな
黒い世界
行き交う人々の
足音に表情はない
遠くに延びる
路面の先に
視線をくべる
前途が
黒く輝く
燃え上がる
感情を取り除かれたものたちが
あっちへ
こっちへ
通り抜けていく
無音化する
浮かび上る
黒い世界
目を細める
漆黒が
まばゆい
雨に濡れた路面
足下から
命の核心まで
黒く染まる
眼球が
黒光りしてくるようだ
取り出して
磨いて
世界を映し出す
暗黒を
暗黒として
照らし出す
黒い男
黒い男


自由詩 黒い男 Copyright 三田九郎 2013-04-21 10:01:22
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