ほくろの或る男
灰泥軽茶

身体中にほくろが或る男
無数のほくろ一つ一つがコンプレックスの塊であった
写真では意外に目立たないようであるが
映像になるとほくろが
身体中を蠢いているんじゃないかと
恐怖に陥るので極力見ないようにしていた

或る日男は自分の身体を傷つけてまでも
このコンプレックスを除いてしまいたい欲望にかられ
カッターナイフで一つずつ削りとっていこうとした
するとほくろは
パスンパスンと
癇癪玉のように弾けて煙を立てて消えていったのだ
なんだそうならば
はやくこうすればよかったと男は
身体中あらゆるところを傷つけ弾けさせていった

煙がモウモウ立ちこめる中
鏡を覗くと弾けたところは小さな穴になっており
ようくその穴の中を見ると
なんだなんだその奥にもびっしりと
アケビのようなほくろが埋まっているのではないか
居てもたっても居られなくなりほじくりかえすと
ほくろは連鎖的に勢いよく爆竹のごとく弾けて
男は煙と共に消えていってしまった







自由詩 ほくろの或る男 Copyright 灰泥軽茶 2013-04-19 23:02:53
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