バス停
salco

お父さんの部屋は半分おなんどで
机の横にさびたバス停がありました
お父さんが3年前
会社の近くのがらくた市で買って来ました

私と妹は大喜びしました
お母さんは
「何考えてるのよ、こんなもの買って
 車の支払いだって残ってるのに
 返して来て」
とお父さんをしかりました
「安いんだよ。今日で終わりだって言ってたし」
とお父さんは言って
「困るわよ、あんなもの」
と毎日言われても平気なようでした

そうしてきのうの夜中
バスはやって来たらしいです
プシューとドアが閉まる音を
私は夢の外で聞いた気がします
朝、お母さんが起こしに行くと
お父さんはいなくなっていました

おまわりさんが来てお医者さんが来て
「ねむってる間に心臓が止まったんでしょう
 苦しみはなかったと思いますよ」
と言いました
お母さんは冷たいなきがらを揺さぶって
「これからどうすればいいの?」
と聞いていました
それからおじいちゃんとおばあちゃん
おじさん、おばさん達が来て
家が泣き声とひそひそ声でかわいて行きました

でも私は知っています
時々さみしそうな顔をしていたお父さんは
行きたい所があったのです

「よっぽど前に廃止されたのかな
 インターネットで調べても出て来ないんだよ」
「はいしってなあに?」
「やめて、なくしちゃうことだよ」
「なんで?」
「住む人が減っちゃったのかな。どんな所だろうねぇ」
「うーんとね、木がいーっぱいあるところ」
「うーんとね。トトロ!」
「トトロだ! トトロだ!」
「ねこばしゅ!」
「わーいわーい、ねこバスが来る」
「くゆくゆ!」

お父さんの留守にもトトロごっこ
うそんこだけどうそじゃない
ほんものだけどほんとうじゃない
待っても来ないバス停にはその内あきて
四年生になった私は
マンションのローンが大変なの!
なんて友達とため息つくまねをしたり
一年生になった妹も
なかよしの子の家に行ったり来たり

枕元の腕時計は止まっていました
バス停の時刻表どおり2時45分
大分交通 直川駅行き
風の森


自由詩 バス停 Copyright salco 2013-04-11 23:21:12
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