風も雲もタバコの煙も全て過去にある

はるか後方で私の影にまとわりついている

確かめることはないけれど


過去の恋にときめくは片足立ちのフラミンゴ

檻の外から見ていると老人に肩を叩かれる

指さされた看板には「えさをあげてはいけません」


陽だまりの中に穏やかに笑う人よ

今夜も悲しみのあまり大量の春雨を郵便受けに入れてくる人よ

どちらも幻想の中のことであり

幻想の中から抜け出てこない

明日会う誰だって幻想の中から出てこない


すべてのしがらみがなくなって

あなたは笑うのだ

誰もあなたを抱きしめなくなって

あなたは笑うのだ


すすきが囁く草原の向こうから

牛の遠吠えが聞えるよ

それを確かめにはいかず

あなたは歩いてゆくよ

あんな遠くでちっぽけに

あなたは歩いてゆくよ