きぐるみ
三田九郎

正しさ醜さにくたびれたときひもとくもの
たとえば詩集

靴紐を解いて
靴下を脱いで
握り締めていたものが失われ
冷気にじかに触れ

はだしだ
ぼくははだしだ

裸体 その尊さを噛み締める
たとえば浴槽にて

脱ぎ捨ててしまいたい
ぼく
その精神を
握り締めているものを

守りたいがために手にしたもの
身につけたものが
ぼくを閉じ込め
圧していく

鏡の前の
このきぐるみは誰のきぐるみ

裸体になるため
ぼくになるため
どこへ行こう
どこへ行こうか


自由詩 きぐるみ Copyright 三田九郎 2013-04-07 09:11:04
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