匂いガラスにくるまれて見た夢
高原漣

双子の心臓仔猫の心臓

とっとんとっとん世界をまわせ

器械の心臓双子の心臓

ばらばらばらばらプロペラまわせ

ねむりの上を見よ くろがねの大鷹はとんでいく

静かに滅べひとびとよ

あの日見た墓碑銘をぼくたちはまだ知らない

吹きすさぶ南風が悲しみの雨雲を蹴立ててゆく

空が灰色だからこそ

窓から眺めるのは

朽ちてゆくものどもの流すソロモンの熱い涙

双子の心臓が奏でるは灰色と朝焼けの果てしない終わりへの旅路

人類のはるかなる追想曲

天に昇るような演奏の喝采はただ一言のお見事ブラーヴァでいい

南の島のねむれる子らの上に

仔猫の和毛のように

ああ、やさしく雪がふりつもる


自由詩 匂いガラスにくるまれて見た夢 Copyright 高原漣 2013-04-06 21:56:13
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