匂いガラスにくるまれて見た夢
高原漣
双子の心臓仔猫の心臓
とっとんとっとん世界をまわせ
器械の心臓双子の心臓
ばらばらばらばらプロペラまわせ
ねむりの上を見よ くろがねの大鷹はとんでいく
静かに滅べひとびとよ
あの日見た墓碑銘をぼくたちはまだ知らない
吹きすさぶ南風が悲しみの雨雲を蹴立ててゆく
空が灰色だからこそ
窓から眺めるのは
朽ちてゆくものどもの流すソロモンの熱い涙
双子の心臓が奏でるは灰色と朝焼けの果てしない終わりへの旅路
人類のはるかなる追想曲
天に昇るような演奏の喝采はただ一言のお見事でいい
南の島のねむれる子らの上に
仔猫の和毛のように
ああ、やさしく雪がふりつもる