振袖の秘密
緋月 衣瑠香

臙脂と茜 間の袂が ひらりひらり
本当の気持ちは金が走る襟の下
黒い帯締めや大きな花が散る白い帯で
殺している

恩師が朗らかに告げる
あなたはいつまでも鶯ね
そうおっしゃってくださるのなら
ほら いくらでも

ホー、ホケキョ

君が行く道を横断
ほら 君の車にも負けない派手な色だから
先を急ぐ君でもブレーキを踏んでくれるでしょう

ケキョッ、ケキョッ

紅白でめでたいねって
だって祝い事ですから気合を入れたの
誰とも被らない不思議な色
赤でもピンクでもない

ただの私

ホ、ケキョケッキョ

鳴き声がコンプレックスの鶯だって
鳴けよ鳴けよと言われれば鳴くしかないのです

私 君のことが好きだったの
でも今じゃ袖を ひらりひらり

この花々 まるで牡丹や蓮のようでしょう
ところどころに黒を差し色で使ったのは
あの子を忘れていないって意味よ

ホー、ホケキョ

遠くでないている
誰の声かは聞かないで
ああ 法華経を読んで大人になりたいわ


自由詩 振袖の秘密 Copyright 緋月 衣瑠香 2013-04-01 01:07:17
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