振袖の秘密
緋月 衣瑠香
臙脂と茜 間の袂が ひらりひらり
本当の気持ちは金が走る襟の下
黒い帯締めや大きな花が散る白い帯で
殺している
恩師が朗らかに告げる
あなたはいつまでも鶯ね
そうおっしゃってくださるのなら
ほら いくらでも
ホー、ホケキョ
君が行く道を横断
ほら 君の車にも負けない派手な色だから
先を急ぐ君でもブレーキを踏んでくれるでしょう
ケキョッ、ケキョッ
紅白でめでたいねって
だって祝い事ですから気合を入れたの
誰とも被らない不思議な色
赤でもピンクでもない
ただの私
ホ、ケキョケッキョ
鳴き声がコンプレックスの鶯だって
鳴けよ鳴けよと言われれば鳴くしかないのです
私 君のことが好きだったの
でも今じゃ袖を ひらりひらり
この花々 まるで牡丹や蓮のようでしょう
ところどころに黒を差し色で使ったのは
あの子を忘れていないって意味よ
ホー、ホケキョ
遠くでないている
誰の声かは聞かないで
ああ 法華経を読んで大人になりたいわ