見送り
Lucy

誰が見送っていたのか知らない
わたしは振り向かなかったから
三月の道をざくざく歩いて行ったから
足取り軽くはなかったけど
雪解けの道が歩きにくかったからじゃなく
涙で目の前がいつも曇っていたからじゃなく
母さんのきまじめな生き方を
憎んでいたからばかりじゃない
とても心細かったけど
どこまでだって歩いて行けた
この世のどこかのゴールではなく
見えない遥かな地平へ向かって
歩いていると感じていたから
この世の誰かへの愛でなく
見えないものへの
見えない恋で胸が張り裂けそうだったから

二度と
ふりかえらない君を
ここで見送る





      ー 蒼原42号(1997、12月)ー


自由詩 見送り Copyright Lucy 2013-03-30 22:03:06
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