座布団
草野春心



  縁側に置かれた
  座布団にひなたと
  猫のにおいが残っている



  どこかで水が流れているのに
  影も形も消えてしまったみたいだ
  風に運ばれ
  気まぐれな香りを転がす
  弱く染まった冬の木の葉と
  あなたを思うこの心はやがて
  ほとんど見わけがつかなくなる



  冬の陽差しが
  少しだけ、春に向けて傾く
  今日の日をあなたと確かに過ごした
  本当さ
  本当だろう?
  溺れそうに深く苦しい
  光の滴が残っている





自由詩 座布団 Copyright 草野春心 2013-03-28 23:21:08
notebook Home 戻る  過去 未来