朗読喫茶
るるりら

喫茶店が次々に店を閉じたというのに
この店だけは流行っています
屋根すらない喫茶なのです
白木蓮を囲んで 簡単な椅子が置かれています
清水から作った ささやかな飲み物があるだけの店です

土筆が芽を出すころになると 
喫茶店の中庭の 白木蓮の花

蜀台に灯りがともるように
白木蓮の花が 咲きますと

あめやかな その花弁に
文字が 浮き出てくるのでございます
たいていは 恋の詩が うきでてまいります
その文字を 恋人に聴かせてあげると

かならず その夜は
詩のとおりの物語を夢にみるのでございます
やさしい詩です その人にとって 
もっとも やさしい夢が現れるのでございます

飼っている犬に 聞かせてあげるなら
その犬がもっとも幸せな時間の夢をみるのでございます

その言葉を聞いたものも 喋ったものも
同じ夢をみるのでございます
そして同じように 微笑むのでございます

あめやかな声色なんぞで話をしたことなどない人ですら
そのようなことがおこるので ございますから
まだまだ この世は 常盤色でございます


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初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に
投稿させていただいたもの

  http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0
タイトルは、aoba_3Kさんです。




自由詩 朗読喫茶 Copyright るるりら 2013-03-22 14:52:50
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