魚を燃す
草野春心



  魚を燃していたのだと
  きみが言う
  誰にともなく
  酸化をはじめたばかりの
  鉄の表面に似て



  せつないくるしい
  いとしいさびしい
  かなしいやましい
  それは心の問題ではない
  それは血管をほんとうに堰きとめている
  おお
  夜がまわる
  乗りおくれてしまいそうな速度で
  メリーゴーランドがまわる
  涙を流すには速すぎるし
  笑いこけるには遅すぎるのだ
  メリーゴーランドがまわる



  きみの瞳は宇宙のようにくらく遠く
  篝火のように安っぽい
  綺麗だ
  とても
  魚を燃していたのだと、
  きみは言う。はっきりと口にする。
  それはとてもみにくかったろう?
  それはとてもくさかっただろう?
  それはとてもぬるかっただろう?
  わかるよ
  わからないよ
  おお、
  海がまわる




自由詩 魚を燃す Copyright 草野春心 2013-03-20 21:58:35
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