銀の筒、真鍮の壁、珪素の靴
竜門勇気

四月を前にして
雪を振れば風もふく
何かをごまかして生きるのは
つらいけど らくだった
夏までには
ダメになっちまおう
決意みたいな確信みたいな
淋しい独り言を路傍の草が聴いている

うつむいて歩く
下むいて嫌なことばかり
浮かぶ言葉の出来損ないを口の中で噛みながら
でもとりあえず
無駄に振り返ったりはしない
みんなが俺を
暗い野郎だって思っても
後ろ向きにはなってやんねーよ
やれないで できないで
うつむいて歩くのさ
真っ直ぐ前にうつむいてるんだ

人生のルールは加算だけ
乗算なんてほんとはないんだ
後ろ向きを後ろ向きでどうにかなんて出来ない
生き方なんて言葉のトリック
信じたって騙されるだけ
魔法使いの袖の下で
割れてるタネに目をつぶって
楽になったふりをするだけ

四月を待ってだめになる
夏なんて秋なんてその先なんて
待たなくったってOKだ
こなくてもいいもんなんて待つな
うつむいたまんま
うつむいたまんま

ごまかして楽になろう
うつむいたままたどり着こう
全部捨てろ
一つ残らず
もう苦しくなけりゃ 悲しくても構わない


自由詩 銀の筒、真鍮の壁、珪素の靴 Copyright 竜門勇気 2013-03-19 01:08:52
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