陸に上がった船
イナエ

陸に上がることなど望んでいなかった
沖から寄せる波に乗せられたのだ
いつになったら戻れるのか
オットセイだったら良かったのに
だが人の助けが無くては水の上でも
自由には動けない
ましてや陸では…

あがくことも出来ないで
雨に打たれ 雪をかぶり
じっと助けを待っている
じっと…

まわりに背の高い草が伸び
やがて枯れ 再び芽を出した
鳥が北から南へ 南から北へ 
渡っていった

なかには空に突き出たマストに止まり
不思議そうに話しかける鳥もあったが
足下を土に埋めた船は身じろぎできず
無言でかしいでいた

時折 
人が何人か ながめては
つぶやきあって去っていった

きっと相談していたのだ
今度こそ 助けてくれる
今度こそ 今度こそと
希望をつなぎ
二年が過ぎた



自由詩 陸に上がった船 Copyright イナエ 2013-03-10 14:21:44
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