救いのために
三田九郎

書くことで
いま
始まるかもしれない
もちろん何も
始まらないかもしれないけど

始まりも終わりも
あいまいに漂っている
生も死も
そのときには
わからないのかもしれない

知らされないまま
始まって
終わる
あいまいに過ぎていくのは
救いなのかもしれない

あとに残される
誕生と死亡の記録
書いたもの
書かれたもの
書かれなかったものたち

書くことで
僕のうち
誰かのうちに
いつか何かが
始まるかもしれない

書く
いまはまだ
知ることのない始まり
始まらないかもしれない始まり
救いのために


自由詩 救いのために Copyright 三田九郎 2013-03-05 18:10:35
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