ひとへ
日下日和

過ぎ去るものがあって、僕は奏でられているものを聞いている
耳から耳、手から手
それから

夕立に降られそうになって、傘を買った
小さく折りたたまれた傘で、雨が降らなかったので広がることはなかったが
鞄の中にしまいこみ、雨があればいつでも

電車の窓に映る影はたくさんあって
いったいどこまでがここにあるのか
どこへ走るのか
足音もなく
はやく過ぎていく

それから

僕らには空気の重さがあって、夜の満ちた匂いがあって、朝明けの遠い記憶があって
なだらかな平行線がゆっくりと触れて

浅い川を見た
夜があったので底は見えないが
流れが僕らに吹き込んだ

泣いたね。笑ったね。

向こうのほうで花火
すこしだけ、見えた


自由詩 ひとへ Copyright 日下日和 2004-12-25 01:50:33
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