幻影(まぼろし)
未有花

芳しい薔薇をあなたにあげると
差しのべられた手をつかんだのがそもそもの間違い

やがて薔薇は枯れてしまい
私がつかんだものは幻だと知らされる
私が愛したあなたはもうどこにもいない

恋は幻影まぼろし
いつだって偽りの言葉に私は惑わされる

永遠を夢見て夢中になるけれど
冷めれば愛は知らん顔で私はいつも途方に暮れる

愛は幻影まぼろし
赤い糸はしょせんおとぎ話に過ぎない

運命の相手に思えたあなたでさえ
今ではすっかり仮面がはがれてまるで別人のよう

できれば最後まで仮面を被っていて欲しかった
偽りの愛でもいい
いつまでも私をだましていて欲しかった

恋は幻影まぼろし
そう知りながらも私は今日も恋に恋をする

一輪の薔薇をあなたが差し出すのを
偽りの言葉をあなたがささやくのを待っている

愛は幻影まぼろし
今夜も冷たいあなたの隣で背を向けて眠る

だまされた振りを演じ続けながら
別の誰かと恋に落ちる夢を見る





自由詩 幻影(まぼろし) Copyright 未有花 2013-03-02 09:08:48
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