かなりや

生卵を飲むのが好きなのは

畑からひっこぬいたそのままをかじるような気持ちがするからだ

根野菜を泥もろとも食うなんて御免だが

わらくずや血で汚れた卵のほかほかと可愛いこと

鶏の尻の下をまさぐって

その場でいただきたいくらい

古新聞で包むと

書いてある文字をそっくりすべて飲み込んでしまいそうな白さに気づく

鶏卵の分際であさましいことだが

生まれたばかりの命にはどれにも可能性がたっぷりとあって

反対にほかのものが何にもないことを知るのである

兄は

生卵を飲むと元気が出るなあというが

それは勘違いである

殻を鶏小屋の屋根に投げるのも私の楽しみで

上がりきらなかった殻を鶏が踏む

クチャリという粘った音が

乾いた朝には丁度いいのである


自由詩Copyright かなりや 2013-02-28 23:36:54
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