天使たちの罠
ホロウ・シカエルボク




お前の髪をほどいて、外に放り出したら
見たこともない世界が開かれる
小さな世界の中から抜け出せ
小さな世界の中から抜け出せ

メイン・ストリートの真ん中にあるジェラートの店で
見たことのない色味をすべて買い占める
溶けちまう前に何もかも口に放り込んだら
痛む頭を堪えながら叫べばいいさ
小さな世界の中から抜け出せ
小さな世界の中から抜け出せ

一流どころの素振りを見せて
周囲の奴らを煙に巻くのはさぞかし気分がいいだろう
だけどみんないつまでも騙されないぜ
お前がどんな勲章も持ち合わせていないこと
お前がそこらの連中と同じ
フカシてるだけの野郎だってことなんかすぐに判るさ
他人を欺くのは容易いことじゃない

真夜中のキッチン、惰性で欲しがるインスタント・コーヒーを入れながら
誰にも聞かせたことのないメロディーをお前はハミングする
そいつはとてもいい気分にさせてくれるけど
カップの中の湯気と一緒にどっかへ行っちまう程度のもの

よう、表通りへくり出してみちゃどうだい
真夜中の間にだって天使たちは彷徨いてるんだぜ
ちょっと安物の化粧品の匂いがする天使たちかもしれないけれど
いまお前が欲しがってるものくらいなら彼女らはいくらだって持ってるぜ
あとはお前が素直になれるかどうかさ
あとはお前が素直になれるかどうか

よう、誰かの望むお前でいるのは大変だろう
つけたくもない格好つけて眉間にしわを寄せているのは?
もしもどこかで我慢がならないと感じ始めているのなら
今夜あたりケリをつけるべき時かもしれないぜ
今夜あたりケリをつけておかなけりゃ
お前は死ぬまでその仮面をかぶっていなくちゃいけないかもしれないぜ

窓を開いてみなよ、街の喧騒がどこかから聞こえてくるだろう
天使たちの罠に誰かがまた足を絡め取られた
彼女らに骨まで抜かれちまわないためには正直でいることさ
正直でなければ真夜中を突っ切ることなんて出来ないさ
勇気があるなら服を着替えるんだ、草臥れたバイクのエンジンに火を入れて
天使たちとの勝負に繰り出してみようじゃないか





自由詩 天使たちの罠 Copyright ホロウ・シカエルボク 2013-02-24 22:50:31
notebook Home