退学願
イオン

「先生、退学願ではなく
 ボクは退学届が欲しいんですが」
「願いと書いてあるけど、これが退学届になる
 校長が退学を許可するんだよ」
「でもボク、この学校が嫌いになって辞めるのに
 辞めさせて欲しいって書くのは、変じゃないですか?」
「また、そういう事をいう
 だからイジメられるんだよ」

「先生、ボクはこの学校が嫌いなんです
 なぜ、嫌いな学校に
 お願いしなくてはいけないんですか?
 こんなお願いを書いたら
 ボクが学校を見捨てたことにはならない」
「これは、学校の規則だからね」

「先生、お願いということは
 退学を許可しないという事もあるんですよね?」
「いや、許可になるよ」
「それなら、願いを書く意味がないでしょう?
 ”退学を許可しない”
 学校は努力するからということなら解るけど」
「いや、学校はもう十分努力した」
「してない」
「いや、した」

「先生、それじゃ
 退学理由に”先生の努力不足”と書きますね」
「だめだよ”進路変更”と書いて」
「えっ? 進路変更じゃないでしょう
 だって、ボクは辞めて何かする訳じゃないですよ?」
「何もしないとういう進路に変えたことになる」
「何それ、書きますよ”先生の努力不足”」
「あぁ!、そんなことして
 だから、キミは嫌われるんでしょ!」

「先生、これで校長が許可したら
 ”先生の努力不足”を
 認めたことになりますね」
「認めない、書き直して!」
「認めないのなら
 退学させないということですから
 ちゃんと努力してくれるんですよね?」
「退学願を書いた時点で
 キミは先生を見捨てたんでしょ
 もう、キミは私の生徒じゃないよ」

「先生、わかりました
 退学理由を変えます
 ”先生の努力不足による進路変更”」
「もう、いいよ、それで
 何でも、人のせいにして生きていけばいい」
「はい、でも悪くないですよボク
 退学届を退学願にして
 人のせいにしているのは学校のほうですよ」


自由詩 退学願 Copyright イオン 2013-02-20 00:33:37
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