王様
月形半分子

蛙の世界の王様は、大きな大きなガマガエルです
沼の淵の一番高い岩の上を玉座にして、毎日世界を見下ろしています。その視線は、つねに安定したさざ波に注がれました。
若々しい雨蛙は王国の奴隷です
王様を見上げるたびに
いつも美しい月のような、ぽっかりあいた井戸の口が見えるのです。その視線は美しい予感を宙に描くように煌めいていました。
二人見えるものが違うから、この沼はこんなにも静かなのでしょうか

さてさて人間の世界の王様よ
あなたは今頃何を見ていらっしゃいます?
さてさて王様、奴隷のような労働階級の私が
今時分何を見ているかわかりますか?
わかりますか?わかりませんか?
ふむ。人間世界の王様は下を見るのに飽きられたのか、高所恐怖症にでもおなりなのか、上ばかり夢みがちにご覧のようす。
奴隷のような労働階級にいる私は
見上げ続けることに疲れ果て
今、生まれてはじめて下を見下ろしたところ
果たして私は王様と同じものを見れたのでしょうか?






自由詩 王様 Copyright 月形半分子 2013-02-15 02:18:50
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