衝動と平衡
within

かすみのかかった素裸に
眉間の奥が
焼けているように感じる
雲のない晴空に
ベールを剥がす雨は
降って来ない

憑かれたような
掌に疼く衝動に
平衡は乱され、
青い乳房は
もぎ取られる

果肉の腐った臭いは
虫を呼び、
新たな種子を産み付けられる
匂いに酩酊したオスは
幻を追いかける

腫瘍は腸内を
ビランさせ
痛みは
絶望を覚醒させる

流された地で
スペクトルが交わる
世界史の一片に
オスは欲情する

チェーンソーを持ったメスが
やってくる
― ギウウウN
  ギウウウN ―
扉は切り裁かれ、
古びた壁から
黴の臭いがする

遡上するように
故郷へ帰る
巣に戻ろうとする本能のまま
子宮を指で触れる

抑えつけられた
情欲は
無残な罪を
産み落とした

身は焼かれ
骨は砕かれた
世界は
炭素とカルシウムに
戻された
ここは浄土か?


自由詩 衝動と平衡 Copyright within 2013-02-06 12:48:56
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