乾いた唇
within

 戦いて戦い抜いて倒れる木々に、草花は黙とうし、露を結ぶ。沈黙の重さに虫達はつぶれ、粘っこい汁だけが、ぷくりぷくりと浮上する。飢えた狼が、血気に引かれやってくる。狼たちは手負いの羊がいるだろうと妄想しながらやってくる。アヌスから水便を垂らした女がこちらを見ている。草原に吹く風が凍りつきそうだ。便と血の入り混じった臭いは、やがて川から海に流れ、女の元へと還る。性欲をおぼえた幼児は全てを飲み込むために、言葉を姦通する。モザイクは国境を越えることで消されてしまった。誰も仮面で隠すことができずに舞踏会は開かれなくなった。性液の腐った悪臭だけが、残され、漂っている。工場からは有機溶剤の臭いが漂っている。その臭いに透明な翅の羽虫が群がる。群がりの中から産み落とされた卵は、側溝のドブ水の中で殻を破る。稚児は、好きにすればいいよ、と言われるがまま、屹立した蛇を露出した。嫌悪する少女たちは、決して自らの嘘を認めなかった。暴露されるまで秘匿される陰。もう一度、側溝で眠ろう。狼が喉の渇きを癒すために訪れる、森の奥の工場に秘められた家。


自由詩 乾いた唇 Copyright within 2013-02-03 14:53:34
notebook Home 戻る  過去 未来