拒め
Giton

.
正クリスタルの羽根
たくさんのフラクタル
この星にはじめて兆した曖昧な生命の
膠質膜コロイドのようにあえかなしじまをくぐり

おりてきた
堕ちて来た
ちいさな
天使たち

神さまの名簿にはぼくらの名前なんか載ってないよ
神さまの名簿にはやつらの名前など載ってるものか
神さまの名簿は巨きすぎるから死すべきものどもには見えないのだ
目を凝らしたって見えない 誰にも見えない

こんなに巨きいとは誰も思わないから…

ね?

ほら?

とおくから Proxima Centauri☆ の向こうから夜のしじまを透かして見れば

巨きな字に見えるだろう…
そこから7光年跳んで、ぐるっと頸を回せば
また別の字が見えるだろう
それからまた21光年跳んで…

きみはもう生きていないのさ
ぼくはもう生きていないのさ
そのむかし いつのことかはわからないが
ひとすじの短命な流れ星がすっと光りましたとさ

青白いきみのひかり
銀河のかたすみにそれがきざしたとき
こどもはとてもわんぱくで いつもまゆを寄せていて
みんながきみを怖がった

それから何年かが過ぎて
きみは髪を伸ばしておとなしくなった
正クリスタルの羽根 たくさんのフラクタル
そらのとおくからおりてきて

きみはぼんやりと耀き
ぼくはきみの伴星たらんと欲した
そうしてまた何年もが過ぎてしまって
きみを忘れたことはなかったが

ふと夜のしじまに目を遣ると
きみの光跡は消えていた。
正クリスタルの羽根 たくさんのフラクタル
きみの遺体おおうべき

あえかな結晶が冷たい水とはならぬよう
しんしんと冷え

しんしんと

すべてのぬくもりを拒め


☆(注) プロクシマ・ケンタウリ:太陽系に最も近い恒星。約4光年。
.


自由詩 拒め Copyright Giton 2013-02-04 23:22:34
notebook Home 戻る