静かな波紋のごとく
石田とわ
大切にしたいものがありました
それはひどく不器用で
武骨ななりをしておりました
それのどこに惹かれたのか
今となっては見つけることは難しく
幾度もじぶんに問うては迷うのでした
それでもやはり大切なことに変わりなく
その不器用さも武骨さも
すべてをこの手にしたかったのです
手に入らぬものほど求めてしまうのは
なんと浅はかな愚かしいことでしょう
けれどこころ震わせるほどに
惹かれるものに出逢えたことだけで
しあわせを覚えたのもまた確かです
愚かしいと嗤われようと
惹かれたじぶんのこころに嘘はつくまいと
そう思うばかりです
季節の流れの中でそれは形を変え
思うこころも変わっていくのでしょう
変わることを恐れずに
まっすぐに見つめ受け止めようと
まだ冷たい春の風に誓うのです