静かな波紋のごとく
石田とわ



    


      大切にしたいものがありました
      それはひどく不器用で
      武骨ななりをしておりました
      それのどこに惹かれたのか
      今となっては見つけることは難しく
      幾度もじぶんに問うては迷うのでした
      それでもやはり大切なことに変わりなく
      その不器用さも武骨さも
      すべてをこの手にしたかったのです
      手に入らぬものほど求めてしまうのは
      なんと浅はかな愚かしいことでしょう
      けれどこころ震わせるほどに
      惹かれるものに出逢えたことだけで
      しあわせを覚えたのもまた確かです
      愚かしいと嗤われようと
      惹かれたじぶんのこころに嘘はつくまいと
      そう思うばかりです
      季節の流れの中でそれは形を変え
      思うこころも変わっていくのでしょう
      変わることを恐れずに
      まっすぐに見つめ受け止めようと
      まだ冷たい春の風に誓うのです
















自由詩 静かな波紋のごとく Copyright 石田とわ 2013-02-04 08:09:06
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