半端もの
石田とわ

        「不用品なんでも買い取ります」
             
        そんな張り紙のある煤けた店で
        残っていたわずかなやさしさを売った
        音のでないラヂオや首の回らない扇風機
        色褪せた人形に取っ手のとれた鍋たち
        必要とされ、使い古され見捨てられたものたち  
        半端なやさしさほど邪魔なものはなかった
        捨て去ってしまわなければ刃となって
        わたしを苛み続ける
        痛むやさしさを引き剥がし
        安価な値札を張り付ければ店の片隅で
        かなしげにわたしを見送った
        埃まみれの店をあとにするとき
             
        「不用品なんでも買い取ります」
             
        乱雑に書かれた張り紙が再び目に映る
        不用の烙印は売ったはずのやさしさではなく
        わたしに押されたのではなかろうか
        そんな思いが頭をよぎり
        振り返ることができなかった
        わたしは見捨てたのだ
        半端なやさしさを抱えることのできない自分を
        後悔という名の代価を握りしめ
        俯くことも赦されず歩くしかない
        不用の烙印を背負いながら














自由詩 半端もの Copyright 石田とわ 2013-02-02 02:05:38
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