半端もの
石田とわ
「不用品なんでも買い取ります」
そんな張り紙のある煤けた店で
残っていたわずかなやさしさを売った
音のでないラヂオや首の回らない扇風機
色褪せた人形に取っ手のとれた鍋たち
必要とされ、使い古され見捨てられたものたち
半端なやさしさほど邪魔なものはなかった
捨て去ってしまわなければ刃となって
わたしを苛み続ける
痛むやさしさを引き剥がし
安価な値札を張り付ければ店の片隅で
かなしげにわたしを見送った
埃まみれの店をあとにするとき
「不用品なんでも買い取ります」
乱雑に書かれた張り紙が再び目に映る
不用の烙印は売ったはずのやさしさではなく
わたしに押されたのではなかろうか
そんな思いが頭をよぎり
振り返ることができなかった
わたしは見捨てたのだ
半端なやさしさを抱えることのできない自分を
後悔という名の代価を握りしめ
俯くことも赦されず歩くしかない
不用の烙印を背負いながら