独りさすらう
たもつ

独りさすらう俺の体を 
降りだした雨が切り刻む 
切り刻まれた俺の体は軽く分裂する 
でも心は切り裂かれないから 
浮いたまま 
雨に打たれても 
俺の心は乾いちまってる 
おまえがいないから 
乾いちまってる 
こんな日は古傷が
おまえに会いたいと泣く 
おまえを抱きしめたいと泣く
でも軽く分裂してるから 
おまえはきっとすり抜けていくだろう 
俺を追い越す車のテールランプが 
雨に滲んでせつない 
そしてそつがない 
しかもつつがない 
そんなあいつは美人局 
おまえの代わりにはなれない 
軽く分裂した体ごとに 
涙が流れて 
それぞれの頬を濡らす 
寒くはない 
夏だから 
おまえの去った夏 
あいつが産まれた夏
俺がコピー機を壊した夏 
そんな俺をあの娘が叱った夏 
すべて背負って 
俺は生きていく 
でも軽く分裂しているから 
すべてすり抜けていく 
あの娘は今頃きっと自宅で 
雨に濡れることもなく 
屋根に守られているだろう 
俺は誰も守ってやれない 
それなのに唯一の友達の名前は 
まもるだった
なあ、まもる、
あの頃は大人になって
コピー機を扱う日が来るなんて
思いもしなかったな 
そんな言葉を噛みしめながら 
俺は壊れたコピー機の前で茫然としていた 
そしてあの娘に叱られた 
俺が独りさすらう 
浮いた心が風に飛ばされて 
流れ星になる 
でも雨だから見えない
俺は独りさすらう
たとえ躓いても
俺は独りさすらう
躓いたら転べばいいじゃない
とおまえは言った
言ってくれた
コピー機は壊れたまま
同じ場所で
間違えた何かを複写し続けてる





自由詩 独りさすらう Copyright たもつ 2013-01-31 19:25:56
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