吊革
Seia

吊革に捕まろうと
子供が両手を精一杯伸ばしても
ぎりぎりで届かない
近くて遠い
輪っかを見つめている

その子は多分何年後かには
何も考えずにそこへ辿り着く

何年待っても、何年願っても、
叶わないものがいくつか、
人によってはたくさん、ある。

それでも見つめてしまうのは
幼い頃の記憶がそうさせるのか

届かなかった手
追いつけなかった足

見えなかった景色
間に合わなかった時間

生まれなかったもの
生まれてしまったもの

忘れられないこと
忘れてしまったこと


吊革に伸ばしたその両手は
いったいこのあと
何を掴んで 
生きていくのだろう

何を手放して、、生きて、放す、

手を離す、

吊革から。手を放す、

、文庫本から。

手を話す、

花束から。 手を放す、

メモ帳から。

手を放す、

から。

手をはなす、から。


自由詩 吊革 Copyright Seia 2013-01-27 21:02:44
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