海の魔物たち ☆
atsuchan69

デッキを叩きつける大粒の涙や嫉妬に狂った風、
幾度でも海に落ちる雷の眩しい光とけたたましい声が鳴り止まぬ
転覆するくらい傾いては揺りもどす破れた帆の船に乗った弱虫どもよ
今夜もセイレーンたちが舞いとぶ嵐の海は呪われている

白い飛沫は、やがて人魚の姿になってお前たちを海へと誘う
険しい山のように高い波が崩れたあとに深くて暗い海の底がのぞくと
煌びやかな真珠色の壁に包まれた柔らかで黒い肌の巨大な鮑が一枚、
そしてまた一枚、硬く醜い殻の家に隠れ住んでいるのが見つかる

 ――来なさい、
 ここは何処よりも静かで安全です
 ずっとここで眠りなさい
 さあさあ私の中へお入り、早く

弱虫どもめ、そうやって海の魔物に喰われちまうがいい
俺の背中の傷を見てみろ、ジブラルタルで大蛸に噛まれたやつだ
今でも忘れたころに痛みやがる
傷口にまだ毒が残っていて一晩中のたうちまわるんだ







自由詩 海の魔物たち ☆ Copyright atsuchan69 2013-01-25 14:45:06
notebook Home 戻る