パンセ
衣 ミコ


鈍い痛みの中でめが覚めた
鳥の首を絞める夢を見た
窓の外はいつもよりも薄暗く
雲泥がたちこめている
分厚い緑色のカーテンは
陽光を頑なに拒む鎧戸のようで
その重たい質量に安堵する

食卓につく、
湯気のあがる鍋の中で
真白いふたつの球体が踊る
それを眺めながら
瞼をそっと閉じて
反芻する

(息絶える前
 絶命の刹那に
 鳥は美しい
 狼の赤児に姿を変えた
 私は慌てて
 幼い体躯を胸に抱き
 血の滴る新鮮な
 生魚の肉をやった
 するとそれはすくすくと育ち
 私の実妹になった)

いのちを学ぶ為に
幾つかしてきたことがある

朝、茹でた卵を食べる。

止め木が外れ
何もかもが流れ落ちていく腹の底に
白く丸い影を落とし込む
すべてを吐き出して
すべてを飲み込んでも
まださみしいと嘆く
暴君の為に


自由詩 パンセ Copyright 衣 ミコ 2013-01-25 01:31:48
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