器
三田九郎
わたし
その器から
人間があふれ出す
あとになっては
思い出せもしないことで
ふいに気持ちが弾け
嗚咽する夜がある
灰色の日常に染められ
瞳も心も淀んだわたし
その器から
苦しみ
悲しみ
深い 鋭い 原色の感情
わたしを背負うわたしの悲鳴
人間があふれ出す
生きる
その言葉が遠い
いつものわたし
けれども
その器には
確かに人間が
わたしが
生きている
生きているのだ
自由詩
器
Copyright
三田九郎
2013-01-24 23:02:32
縦