みいちゃん
そらの珊瑚

みいちゃんは
働きながら
ずっと両親と同居して
後半二十年は介護して
ようやく見送りました

パラサイトシングルとか
親離れできないとか
みいちゃんのことを
呼ぶ人もいたようです

好きな人がいましたが
結婚しなかったそうです
けれど
みいちゃんは
そのことを悔やんだりはしていません
選択したのは
ほかならぬ自分自身だからです

今が幸せ、といいます

飼い猫のララが
散歩から帰ってきて
泥だらけのその足を
雑巾で拭きながら
今が幸せ、といいます

 
  猫が帰ってくるとき
  かすかな足音でわかるの
  おかえりと言うの
  ただいまの代わりに
  ただ猫はニャオンと鳴くの
  もう誰も帰ってこないこの家で
  猫が帰ってくるのを待っているの
  お腹をすかせた猫のために
  ごはんをあげて
  ぬくぬくと一緒に寝るの
  子供がいたなら
  こんなかんじなのかな


みいちゃんは生まれたときから
ずっと同じ家に住んでいます
柱にはお父さんがつけてくれた成長の記録
台所にはお母さんの糠床
浴室につけた転倒防止の手すりは
両親のために取り付けたものですが
今は自分もそれに支えられているといいます
支えてきたものに
今は支えられている
人生ってよくできているのよねえ、と
 

一人暮らしだけど一人じゃないの
今も幸せ、と
笑うと出来る目尻の皺が
とてつもなくチャーミングなのです


自由詩 みいちゃん Copyright そらの珊瑚 2013-01-23 09:00:37
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