ああ無情…でも負けない!
夏美かをる

(以下英語で)
「カスタマー・サービスです」

「あの、レ・ミゼラブルの上映スケジュールを知りたいのですけど…」

「それでしたらウェブサイトで調べて下さい」

「さっき調べたのですが、サイトによって違う時間が載っていたんで電話したんですけど…」

「では、こちらの音声サービスに掛け直して下さい」

えっ?あなたが教えてくれないの!!! 
まあ、アメリカのカスタマー・サービスだからな…仕方ないか…

気を取り直して、教えてもらった番号に掛け直す

「こちら自動音声サービスです。
発信音の後にお出かけになる映画館の名前を言って下さい」

えっ?映画館の名前? 
一度電話を切って、映画館の名前を調べて、掛け直す

「こちら自動音声サービスです。
発信音の後にお出かけになる映画館の名前を言って下さい」

「エー・エム・シー サウスセンター」

「エー・エム・シー サウスセンターですね。了解しました。
では発信音の後にご覧になる日にちを言って下さい」

「1月10日」

「1月10日ですね。了解しました。では発信音の後にご覧になる映画名を言って下さい」

「レ・ミゼラブル」

「認識できません。もう一度言って下さい」

「レ・ミゼラブル」

「認識できません。もう一度言って下さい」

「レッ・ミゼラーブル!」

「認識できません。もう一度言って下さい」

「レェッ!・ミゼラァ〜ブル!!」

「認識できません。もう一度言って下さい」

「レェッ!・ミゼロァ〜〜〜(ここ思い切り巻き舌で)ブルゥズ!!!」

「申し訳ありませんが、お客様の声を認識することができません。
お電話ありがとうございました」

ツー、ツー、ツー…

えーーーーーーーっ!? まじ?

一応これでも、日本にいた時に猛勉強して
TOEIC960点、英検1級取ったんですけど…
英語を使った仕事もしてたんですけど…
アメリカに来て以来崩れ落ちる一方の自信と自尊心


「何 レ・ミゼラブル、レ・ミゼラブルと叫んでいるんだ?」
向こうの部屋にいた旦那がやってくる

かくかく しかじか…

「なんだ、それならば僕が掛け直してあげるよ」


いい、それはいい!
あなたに頼みたくない
私は私の友達と映画に行くの、
だからあなたには関係ない

あなたは私よりも7歳も年上だから
将来こんなことにも私一人で対処しなければならない日がきっと来る
だからあなたには頼りたくないの



日系情報誌に載っていた
スピーチ勉強会に参加することにした

息子・娘でもおかしくない年頃の学生さん、
駐在のサラリーマンにアメリカ企業でバリバリ働いている人
私のようなおばさん、御年配の方、
そして間違って来てしまったけどそのまま入会を決めたインド人らと一緒に
土曜の朝英語スピーチの特訓をしている
この地を自らの足で渡り歩いて行くために それぞれ皆頑張っている
いい同志ができた

夜な夜な原稿を書いて
心臓をばくばくさせながら 震える声で発表する
改善点も沢山あるんだろうけど
とりあえず褒められる
自信と自尊心の種が再び植えつけられる
次回も期待してると言われる
次回も頑張ろうと思う

おばさんだってやる時はやる!
自動音声サービスなんかに馬鹿にされたままでは終わらせられないものね!


自由詩 ああ無情…でも負けない! Copyright 夏美かをる 2013-01-17 16:30:41
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