かりぬい
そらの珊瑚
赤いウミウシの模様であった
デパートの包装紙
それで母はちゃっちゃかと洋服の型紙を作る
かつて何かを包んだものの匂いがしていた
ヒトガタに切った人形が
夢のなかでトモダチになるように
平面であったパーツが
母の手のなかで立体になっていく
裁ち鋏がチャコペンシルの線路の上をざくりざくりと進んでいく
織り布の断面はやがてほつれてやわらかい
仮縫いであった
動かないで、と言われて
みじろぎしないで待っている
まち針
しつけ糸
糸を寄せればおあつらえのドレープが現れる
眼を閉じて魔法のかかり具合を確かめていた
どんなに平面な今だって
仮に縫ってみればいいさぁ
出来上がった洋服は
明日のために少しだけ大きくて
ウミウシの空気を含んでいた
始発駅であった
風の生まれる岬にて
わたしは包まれ
あたらしい中身になっていく