アフリカの角
板谷みきょう

見たことも聞いたこともない
知らない国の痩せている土地に
稲を植えに行って
雨が降らなくて水に困り
そして
稲作を諦めた老人が
土に合う野菜を作ることを思い付き
風土に合う畑作に試行錯誤してる

場所さえ解らない所で
汗を流している老人を
ボクは知ってる

其処で手に怪我をしてしまう

満足に医薬品も揃っていない
医療施設の診断は
腕を切断することだった

熱をもって
腫れのひかない状態で
急遽、一時帰国をし
市立病院で診察を受け
直ぐに入院した
一ヶ月の入院治療は
毎日の抗生物質などの点滴だった

腕を切り落とさずに済んだ老人は
凡そ症状が改善すると
急ぐように退院して
故郷に帰り沢山の挨拶を済ませた

そこに偶然ボクが居たのだ

雪の降らない街に降る雪を
想いながら
2012年11月に
故郷の地を
踏めなくなっても構わない
という覚悟で
再び日本を離れて行った

老人は
日に焼けた浅黒い顔で
アフリカの角の近くの国で
今も汗を流しているのだろう


自由詩 アフリカの角 Copyright 板谷みきょう 2013-01-14 22:14:50
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