リコーダードラゴン
赤青黄



 穴という穴から火を吹いて!
 発熱する小さなドラゴン、楽器の


 でもこいつはドラゴンというよりよく出来た埴輪に近いヤツかもしれない
 でもこいつはきっと無機物よりも動物に近いんやろな


 大きさは十の十五乗ミリ……ウソウソ本当は二十三センチ!


 こいつおもろいんですわ

 ケツ、ああ、ここではリコーダーの底の穴からちゃんと出すもんだすし
 というかリコーダーも人の唾液出すしな


 こいつみてっと
 あんまりリコーダーもペットとも変わらんとよ。


 こいつほんまかわいいんやで

 だってこいつ僕のほうにすりよってきてな
 火を噴いて皮膚を焦がすんやわ

 じゅーじゅーじゅーじゅーわいの肉は焼肉ちゃうねん


 でもなあ、そこがまたかわいいんとちゃいまっか?


 なあかわいいやろ?ホンマにかわいいやろ?そこのおにいさんさあ?
 なあなんかいってくれはってもええやないか?

 なあ?

   (以下略)                            」




とここまでが昨日の本多で
      今日の本多は病院だった


何があったかしらないんだけども
多分またあいつのお気に入りのドラゴンが火ぃ吹いて火事でも起こしたんだろうさ


学校帰りに本多のいる病室へ見舞いに行ったら、
あいつあのドラゴンを殺してリコーダーにしてやがったんだ


あーあ、あれ一匹十五万くらいするのにな



本多は俺が病室に入ったことに気づくとリコーダーをゴミ箱に急いで捨て
何も無かった、いや…してなかった風を装って挨拶をした


俺はそんな本多のよそよそしい態度に気づいていたが気づかない振りをし
ゴミ箱に捨てられた死体と今日弁当に入っていた魚のソーセージとそっと入れ替えた


何、そのままの死体ともみくちゃにされた死体もそうかわらないさ
それに、こっちの方が幾分ましだろう?




そうして俺は病院を出た後
家の庭に小さな穴を掘り死体を埋めて
墓標代わりに花を置いた




俺も昔ペットを飼っていたが、ここまでひどいことはしなかったぞ、本多




いくら俺が冷血漢だからといってさぁ、殺してドラゴンをリコーダにしようとは思わない
ぜ、どうせお前は生き物も無機物なのだろう、いや死んでしまえばそれを無機物として扱
えるのだろう、ゴミ箱に捨てるためにお前はドラゴンをわざわざ殺し、リコーダーにした
のだろう、じゃなかったらわざわざ高いリコーダードラゴンなんざ買わないよな?だって
殺す理由がリコーダーにするためだったら、いくらでも理由がつけられるしな




俺は今更になって本多の前でいえなかったことを心の中でつぶやいた
心とは裏腹に俺の表は至って冷静だった
だからみんなによくお前は冷血漢だなんていわれんだろうな
なんだか悲しい話だぜ
普通はギャップ萌えとかなんとかで人気があったりするのによ!




「きっとあの調子じゃあすぐ退院してまた新しいペットを飼うんだろうな」

なんてつぶやきながら、



俺は静かに目を閉じ土の下に向けて手を合わせ



庭に埋め尽くされた白い花々の養分の元たちに向けて



追悼の念を送る




自由詩 リコーダードラゴン Copyright 赤青黄 2013-01-13 01:16:51
notebook Home 戻る