友情
三田九郎

ありがとうございます
すいません、じじいなもんで、見えねえや

喫茶店で
七十前後の男が小銭を落とし、
床に数枚転がった

僕は眼鏡をかけ、
床を見渡して百円玉を一枚見つけ、
男と男の友人であろう男が向かい合わせたテーブルに
パチリと置いた

ありがとうございます
男の友人であろう男が言い
すいません、じじいなもんで、見えねえや
当の男は照れ隠しのように続けた

ありがとうございます
本人からではなく言われたことに
友情を
救いを見た


自由詩 友情 Copyright 三田九郎 2013-01-12 20:54:08
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