滴路
木立 悟
手はくりかえし空を混ぜた
遠くなり 近くなり
ひとつの重なりにはばたいた
触れる色 触れる音
傷のような軌跡に満ちた
溶けては響きと光になった
水と水をつないでいた
濡れた家と濡れた曇
誰もいない路を映してつづく
水たまりから分かれた滴
光が光を脱ぎ捨てて
光が光を拾ってゆく
枯葉はいつも前後を指さし
影と陰は上下に舞う
音がすばやく通りすぎ
姿をぐるりと廻してゆく
動くものも動かぬものも
小さな色にひたされてゆく
碧の奥へと進むたびに
水と枝の間はひろがり
やがてにじむ陽の洞になり
空の軌跡 手の軌跡
滴の軌跡にかがやいてゆく