メリー・メリー・クリスマス
砂木
小さなツリーに飾りつけ ケーキを食べて
プレゼントを期待して眠った子供の頃
夜中に聞こえてきたのは 言い争う声
弟達は眠っている 耳をすますと台所で
父と母が言いあっている
なんだろうと思っていたら
ドタドタと足音が部屋に近づき
戸が開いて 枕元に何か置く気配
戸が閉まってから 眼を開けると
みかんと五百円づつ入ったビニール袋が
頭の上に置かれていた あー これなの?
忙しく病人を抱えて大変だったから
お金もないし時間もないし
こうするしかなかったのだろうと
小学六年生くらいの私は判断したが
まだ幼い弟たちは 朝 起きて 大ショック
あんなのはクリスマスプレゼントじゃないと
通学中も 家の中でもしばらく荒れていた
私はお姉さんだったので ガキんちょの真似はしない
家庭の事情もまあ わからないわけではないと沈黙した
が ただ今思い返すと じっと睨んでたように
見えなくも無かったろうなあ 父さん母さん
あのあと父母はちゃんと眠れただろうか
朝の騒動を予想して 眠れなかったのだろうか
考えるとなつかしくて幸せな気分 ああ そうか
クリスマスの思い出こそ サンタ・クロースの贈り物
思い出は作るもの メリー・クリスマス
ただ その言葉を交し合うだけで良いのだ
言えない所に居るあなたのぶんも 繰り返しつぶやき
つぶやきの中に サンタ・クロースはトナカイと走り
時を駆け巡り 思いを配り続け
やっと受け取るのは クリスマスではないかもしれないけど
おじさんになった今なら弟達も 思い出したら笑えるだろう
それともいまだに恨んでいるだろうか ガキんちょのように