聖夜はファドの中に漂う
御笠川マコト

色褪せた革の上着を
ベッドに放り投げたら
背中に手を廻して
ドアを閉める
聖夜の街の冷気と
階下で呟く老人の声を消す為に。

部屋に漂わせるのは
大陸の端で
中年女が紡ぐような
ファドの唄
くすんだグラスには
いつもより濃い酒を。

働く為に眠り
眠る為に働く
男達の夢はグレイ
霧のようにグレイ。

唄の意味は伝わらなくとも
見知らぬ痩せた女の
哀しみが伝わる
鉄のように臭い
男達の肌はグレイ
働くために眠り
眠るために働く。



自由詩 聖夜はファドの中に漂う Copyright 御笠川マコト 2012-12-25 23:22:03
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