髑髏
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しゃれこうべは髑髏って書くんだ
たぶん死ぬまで書けないと思う

僕らはサイズ違いを一つずつ持っていて
ときどき皮膚の上から
指でもってお互いのかたちを
たどたどしく確かめてみるのが好きだ

彼女がたった今考えついた望みは
すっかり帽子に
なってしまうことらしいんだけど
誰かにかぶられるのまでは
きっと想像してないよね


彼女はいつも訳わかんないことをいう
まあ、実際には
わかんないこともないんだけど

今日はそれを真似してみよう
例えばこんな感じで
えーと、


指の数がいつのまにか増えて
複雑なコードを鳴らすことができて
やがて僕らはそれに飽きてしまう

それからは、たくさんのスプーンで
どうみても美味しくはなさそうな
目の前のビーンズをすくっては
お互いの口まで運ぶのをくりかえす


でもけっして噛んだりはしないんだ

だから、ふたりの頬が
ひまわりの種をほおばったリスみたいに
まんまるくふくらんでいく

なんかの苦行みたいだな


いよいよこれ以上は
口に入らないよ、ってとき
終了の合図みたいに


この世界がおわる



そう、突然なんだけど
実際そんなもんだとおもうよ
世界のおわりって
その理由はよくわかんないけどさ


顔を見合わせるふたり

きみは満面のぎこちない笑顔
たぶん、自分も同じような顔をしてるよ
まあ、笑うしかない状況だし
なんせ頬が思いっ切りふくらんでるから

で、そのときに
秘密のすべてが明らかになるんだ

すべてっていうのは
すべてっていわれて
いまきみが想像したやつすべて

とにかく全部、いまさらだけど
なんていっても終わりだしね


それから、とりあえずな感じで
ようやく口のなかの
ビーンズを少しずつ飲み込んでいく

味はなんとなくピーナッツバター
みたいなのを想像してくれ
喉がけっして渇いたりしない特別製だ

ふたりは細かいことなんて
どうでもよくなってしまって
あいまいな愛に愛想よく会いにいく


ほら、ブラインドが笑うように揺れて
モノラルで鳴り響く熱のさざなみ

三半規管、さようなら三半規管
時間ぽいのが、後ろ側に流れていく



それでも
見失った彼女が見失った彼女は
見失った彼女を見失ったと思ってて

気がついたら彼女はコート姿
やっぱり買わない、とかいってた
あのフードつきのやつ


ふいに、突然の大雨だ
とおもったら、そうでもなくて
もちろん晴れ、でもなくて
それなら、なんだ?


そういえば世界のおわり、だった
さむいはずだよ、ねぇ?





ゆっくりと、睫毛に雪が降りつもる
けっして溶けはしない雪だ


ああ、彼女が寝てしまった




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自由詩 髑髏 Copyright в+в 2012-12-21 11:35:00
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